November 11, 1997.

夢の中の少女・宮木啓子

今日はだいぶ元気になった。

今日一人目の患者さんの

カオリちゃんはキャンセルだった。

おかしいなと思い、

夜電話するとお母さんが出て

「具合が悪くて入院しました。」と言った。

この一言に一瞬ドキッとした。

昔聞いたことのあるフレーズだったからである。

貴重な尾崎フレンドのカオリちゃんだから

早く元気になって下さいね。

昔の話をします。

小学校６年の時好きな子がいました。

宮木啓子（ひろこ）さんである。

１年から同じクラスだったけど、

急に親しくなったのは

席が隣りになったからであった。

家も近くだったし、

自転車に乗るようになってからは

隣りの家に歩いて行くより

早くいけたものさ。

夕暮れに二人で熱く

語り合うことはなかったけれど、

近くの田圃でとんぼとか

かえるとか一緒にとったり、

草むらでこおろぎをとったりして

盛り上がっていた。

宮木さんの弟は

武といったけど完全に私の子分でした。

中学になって宮木さんの家は新築して、

となり町に越していった。

それでも同じ中学だったから、

クラスは別だったけど

廊下ですれちがう時なんか、

目で合図なんかして、

青春まっただ中でありました。

当時、私はバスケット部で

宮木さんは吹奏学部で

練習場は体育館で一緒で、

いつも意識しながら練習していた。

ある日、練習が終わった後、

宮木さんが駆けて来て

「山崎くん、また武と３人で遊びたいね。」

と言った。

「こんどの日曜日自転車で行くよ。」

と言ったらすごく喜んで帰って行った。

今なら

「いっしょに帰ろうよ」

って言えるけど、

このころはシャイで

そんなことは言えなかった。

その夜、へんな胸騒ぎがして、

宮木さんの家に電話をすると、

隣りに住んでいるという

宮木さんのおばさんが出て

「けいこは具合が悪くて入院しました。」

と言った。

この時の声は今でも忘れない。

次の日学校に行くと、

雰囲気がおかしく、

宮木さんのクラスの前を通ると、

女の子が机にうつ伏して何人も泣いていた。

宮木さんの机の上には

白い華が花瓶に生けられていた。

泣いている女の子に

「どうしたの？」と聞くと、

宮木さんは昨日学校の帰り、

車にはねられて死んでしまった、

と言った。

私はその日、学校を無断で抜けて、

宮木さんと弟の武と３人で遊んだ

田圃のあぜに座ったり、

草むらに寝ころんで空を見て過ごした。

学校を抜けたことは

激怒した担任のTが母に連絡して

家族全員知っていたけど、

たぶん察してくれて、誰も何も言わなかった。

風邪をこじらしたりして寝込むと、

必ず、

13才のままの宮木さんが夢に出てきて、

遊んで帰って行く。

すると次の日は元気になっている。

いつもこの繰り返してある。

昨日もそうであった。

宮木さんの家は

臨済宗妙心寺派だったけれど、

宮木さんの精霊に、

イエス・キリストの御名において

栄光がおとずれますように。

Amen.

Norman Yamazaki, DDS.